【ネタバレあり】ワンダヴィジョン　レビュー

本作の敵とヒーロー

本作で敵がいるとするなら、魔女のアガサではなく(立派なヴィランだと思いますが！)、ワンダのどうしようもない深い悲しみと怒りだったのではと思います。

悲しみと怒りを受け入れたからこそ、ワンダはスカーレットウィッチとして覚醒できたのだと思っています。トリガーはアガサがだったにせよ。

アガサやらSWORDとの一戦を終え、どこかへと消えるワンダが一切謝罪しなかった姿に「君、清々しいね！」とさらに応援する気持ちになりました。

本作でのヒーローは、ワンダではなくモニカ・ランボーですね。彼女の「ワンダを助けたい」という思いと行動はヒーローそのものです。モニカの今後の活躍を期待したいです！期待させる終わり方でしたし！！

マルチバース

本作は、本格的なマルチバース展開の導入ともいえる作品かなと思います。

ただ！本作のクイックシルバー(偽ピエトロ)の使い方はちょっと勿体ないように感じました。

フォックスをディズニーが買収しなければこのニセトロの登場も無かったと思うと一定のシナジーはあったと思うのですが、正確にいえばマルチバースではないので、本物の『X-MEN』のピエトロかMCUのピエトロ、どこかで出して欲しいです。

ワンダの世界

ワンダの魅力溢れる本作ですが、「何故にワンダはこんなに辛い思いをしないとならないんだ…」とワンダの今後の幸せを祈らずにはいられない方が多数発生したのではないかと思います(私もその一人です！)。

周りを巻き込み、生きている人間の意志を無視して劇をしているのでタチが悪いのですが、ワンダにとってこの『ワンダヴィジョン』は箱庭療法的な側面もあったのかなと思いました。

悲しい現実世界を捨てて完全に幻想世界の住人になることもできたと思うのですが、理性と優しさは残っているところに哀しみを感じます(ヘックス〈ワンダの作った世界〉内への無断侵入や攻撃に対する威嚇はかなりクレイジーだとも思いますが)。

『ワンダヴィジョン』を観て、3つの映画を思い浮かべました。

『トゥルーマン・ショー』(1998年)

リアルな人を使ったSHOWという設定

TM & COPYRIGHT (C) 1998 BY PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.

『パンズ・ラビリンス』(2006年)

戦争で心が傷ついた少女、辛い現実より自分が主役の幻想の世界に逃げ込む

(C) 2006 ESTUDIOS　PICASSO, TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMO

『アザーズ』(2001年)

自分たちの生活が脅かされている感覚、「家」への執着や排他性

(C)2001 SOGECINE and LAS PRODUCCIONES DEL ESCORPION

特に似ているなと思ったのが『パンズ・ラビリンス』です。ワンダはソコヴィア紛争の生還者ですし、身近な人を次々と亡くしている境遇で、テレビの世界(≒おとぎ話)に逃げ込むしかないというところに類似性を感じます。

ただ、ワンダの場合は実際に“現実を改変してしまう”スーパーパワーの持ち主であり、最終的には現実を生きる選択をする意志と力を持っているところは違いますね(そしてそれは救いでもあると思います！)。

タイトル『ワンダヴィジョン』とは、「ワンダとヴィジョン」という意味だけでなく「ワンダのヴィジョン(理想または幻想)」・「ワンダのテレ“ヴィジョン”」と色んな意味に取れるようになっています。

町のみんなが笑ってニコニコしている世界から、現実の彼女はこの『ワンダヴィジョン』の一連の騒動(マキシモフ事変)を起こし冷たい目線を避けるかのように隠遁する……理想と現実の大きな差に「ワンダ、幸せになってくれ…」と感じましたが、禁断の書(ダークホールド)で勉強している姿を見て、ある意味前向きになっているのかな？良かったと思いつつ、なんとなく、また意図せず騒動の原因になってしまうのではという若干の不安も残る終わり方でしたね。

というか白ヴィジョンことザ・ヴィジョン、どうなったんですかね…？

スカーレットウィッチに覚醒したワンダ、アベンジャーズの中でも屈指の力を獲得したのではないかという疑惑が私の中に生まれたので、思いっきり戦ってるところを早く見たいです！